北風ブログー751
2023/6/9更新
病気ー1
私は、これまで病気知らずのきわめて健康体で育ってきました。社会人になって40年、発熱したのは2回のみです。しかもおのおの1日だけです。体調のことでほとんど仕事を休んだことはなく、病院に通院したこともほとんどなく、入院をしたことは一度もありません。そのような私ですが、いろいろな健康のことについて悩まされることがありました。ここで私がこれまでにいろいろと遭遇した病気のことを開示してみようと思います。究極の個人情報の開示です。
40歳代のころでした。働いていた大学病院が大阪市内から郊外に移転した頃でしたから平成6年とか7年ぐらいだったと思います。土曜日、メンバー4名で実験をして、お昼休みにその4名と大学生協の横にある「鯨屋」という食堂に昼食に出かけました。「鯨屋」は、私が大学生のころからキャンパスの中にあった家族で切り盛りしているレトロな食堂です。民間の食堂が国立大学のキャンパスの中に生協の食堂と並んで開店していたのも少し不思議ですが、牧歌的でいい感じでした。いまでも「Aランチ1つ!」という「鯨屋」のおばさんの声が聞こえてきます。多分、既得権とかなんとかあるのでしょうね、その日も「鯨屋」は大繁盛でした。その日の定食は、エビフライ定食で、エビフライが2尾ついているのが通常バージョンでしたが、私、1尾追加の大盛エビのから揚げ定食を注文しました。
皆でワイワイと食事をして、医局に戻りみんなは実験に戻り、私は科研(文部省科学研究費)の仕事があったため、少しだけデスクワークをすることにしました。
デスクワークを初めて1時間ぐらいして、なんとなくみぞおちに不快感が出てきました。エビフライの食べ過ぎか、そういえば少し油が悪かったかも、と思いながら、仕事を続けますとそのみぞおちの不快感はさらに強まり右季肋部痛(脇腹の少し上)に集約されていき、ますますその痛みが増してきます。私が苦しむのをみていた部下が「先生、それおかしいですね、胃潰瘍か急性胃炎とちがいますか? 診てくれる医者を連れてきますか?」「あれ、私も君も医者だが……」と思いながらも「うん、誰か連れてきて!」と私はこの部下君に依頼し、この部下の先生は隣の部屋にいた消化器内科の先生に助けを求めに行きました。当時は第一内科(一内)というナンバー内科制でしたので、一内の中に心臓や消化器、脳、糖尿病、腎臓のグループがいたのです。かけつけてくれた消化器専門の医師が、すぐに腹部エコーをしてくれました。
「先生、胆のうに砂がたまる胆砂です。これが胆道に詰まりそうになって痛いのだと思います。とりあえず、今日は土曜日なので明後日の月曜日に再度精査をしてください。痛みはブスコパンですぐに治ります」とのこと。ブスコパン(鎮痙剤)の筋肉内注射で痛みは嘘のように消えました。その時、その消化器内科の先生が本当に名医に思えました。実際、名医だったと思います。今、阪大の消化器内科の教授をしていますから。
月曜日に再度腹部エコーを詳細に撮りました。エコーの技師さん曰く「詳細は担当の医師の診断となりますが、胆砂ではないです。これは立派な胆石です」と打ちのめされるようなこと宣言をされました。そして担当医師から「先生、土曜日の疝痛発作のときに、なにか脂っこいものを食べませんでしたか?」
「ああ、そういえばエビフライを3尾食べました」「先生、それが胆石発作の原因ですよ。そもそも胆砂でそのような疝痛発作は起こりませんよ。先生、脂っこいものは控えてくださいね」との宣告です。それ以来、胆石を溶かす薬ウルソ®を300mg毎日飲むようにしております。それ以来、あのような胆石発作は起こらないのですが、たまに心窩部不快感が2~3年に1度起こるので、その時のためにブスコパン®を購入して予防的に服用しております。
私のかかった病気その1は胆石です。脂っこいものを控えること、胆石の多くはコレステロール結石なので、コレステロールの値に注意が必要なことが予防法です。治療はウルソ®の服用、発作はブスコパン®で抑えることです。胆石が大きいと排出されることがないので、内視鏡による胆のう摘出がいいですね。胆石だと思っていて胆のうがんということもありますので、注意が必要です。胆石が胆のうがんの引き金になるということは現在否定されています。
時代劇でよく若いお姫様が急に腹痛を催した時に「お女中、それは癪(しゃく)だ、癪だ」という場面がありますが、癪というのは、 辞典によると「胸部または腹部に起こる一種のけいれん痛で、多く女性にみられる。医学的には胃けいれん、子宮けいれん、腸神経痛などが考えられる。仙気。仙痛。さし込み。しゃくつかえ。」とありますが、医学的にはその多くは胆石発作だと病理学の授業で習った記憶があります。そのときに「『胃けいれん』という病気はないよ、胃はけいれんしないよ」とも教わりました。