北風ブログー758
2023/7/28更新
ビッグモーター(BIG MOTOR)ー1
最近、ビッグモーターの車修理に関する保険の案件が問題となっております。多分、皆さんご存じだと思いますが、簡単にその内容をご説明します。ビッグモーターに修理依頼のために預けた車をビッグモーターが修理するどころか、傷がついた車にさらに余分の傷をつけて、通常なら5万円で修理が済んだところを新たにビッグモーターの社員がつけた傷もなおさなくてはいけないために15万円の修理費を車の持ち主に請求するというものです。自作自演の事故のようなもので、まさしく言語道断です。
でも、車の持ち主は車両保険に入っておりますから自分のお金を払わずに保険会社が払いますし、車は修繕されて新品同様になって戻ってきますから、この不正請求に気が付くことはありませんし、損をしません。とすると損をするのは保険会社のように見えますし、確かにそうなのですが、ビッグモーターの扱う車はすべてこの保険会社に保険を依頼してくれるとすると、多少の損には目をつぶるわけです。車体についた傷の不自然さを指摘して数万円ビッグモーターから保険会社に取り戻しても、それでビッグモーターがビッグモーターというお得意さんをなくして数億円損をしたら何をしていることかわかりません。
また、実際、保険会社が不正請求されているということはわからないのです。というのも、「これこれの傷を治したので15万円請求します」とビッグモーターから保険会社が言われたら、はいそうですか、と保険会社は保険金を払ってしまします。確実に損をする可能性があるのは、車の持ち主です。なぜなら、保険の等級が下がりますので、次の保険に入るときに高くなります。でも、5万円の傷を15万円にしても多分ほとんど等級が変わらないので、実質、車の持ち主が損をしない確率のほうが高くなります。とすると誰も損をしないので、問題ないかということになりますが、そんなことはありませんよね。車の返却が遅くなりますし、保険会社は余分な作業をしなくてはいけません。それよりなにより、良心の問題ですよね。
「いやいや、良心が多少傷んでもそれでお金が儲かるなら、そして誰も損をしないなら問題にないのでは」という屁理屈も成り立つかもしれません。それでは、私たち医師が、風邪ひきで診察に来られた患者さんに積極的にほかの病気をうつして、余分な投薬をして、収益を余分に上げてもいいのか、ということになります。もしくは、風邪ひきで来られたかたに、余分な検査をして余分な薬を投薬して、収益増を図ってもいいのかということになります。それは当然ダメですよね。私たち医師は、決してそんなことはしません。それは、医師の倫理、ひいては良心の問題だからです。なぜ、その常識がビッグモーターでは破られてしまうのか、それが今透けて見えるよき日本のほころびだと思うのです。