北風ブログー760

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2023/8/11更新

ビッグモーター(BIG MOTOR)ー3

このビッグモーターの事件について2つ考えることがあると申しました。その2つ目の話題です。

資本主義の根本は個人個人の利益の追求です。そのために、各個人が頑張るわけです。ところが、本人がするべきことと逆のことをしたほうが利益をもたらすことがあります。たとえば、バリバリ仕事をする会社員は、定時に仕事を終えて帰宅しますが、仕事が遅い会社員は、仕事が片付かないので残業をします。とするとこの仕事が少し遅い会社員には残業代が発生して、かえって仕事の遅い社員のほうが、給料が高いということになります。給料が高くなると、海外旅行も可能となり、幸福度が高まります。本当は早く仕事をしたほうの給料が高くなるのが通常ですが、のろのろ仕事をしたほうの給料が高くなるのを防止するため、能力給を導入します。ところが個々人の能力を正当に評価するのは難しいですし、同じ仕事を能力の高い人と低い人に振り分けて能力を測定するなどという非人道的なことができないため、どうしても働いていた時間で評価せざるを得なくなります。私たち研究者で言えば書いた論文数や、保険会社の社員なら取ってきた契約数など数量で評価しやすいものはいいのですが、すべての仕事の評価はなかなか定量的に行われません。

同じことは、医療にも言えます。医療に優れている医師が患者さんを簡単に治療した時と、医療レベルが通常の医師が患者さんの治療に難渋した時を比較すると、病院では当然前者のほうが収益が上がるべきなのですが、早く良くなったほうが収益は上がらず、治療に難渋したほうが、余分な検査も多くなり、投薬も多くなり、入院日数も増えるので収益が上がるのです。これは、「出来高払い」だからこうなります。1つ100円のコロッケを2つ買えば200円、3つ買えば300円とたくさん買えば値段も高くなるのは当然ですが、医療に出来高払いを導入するのはおかしいのではないかと20年ぐらい前に言いだされました。 このような「出来高払い」の弊害に対応するためDPCという考え方が導入されています。DPC (診断群分類包括評価) とは、Diagnosis Procedure Combination の略で、「診断病名」と「医療サービス」との組み合わせの分類を基に1日当たりの包括診療部分の医療費が決められる計算方式です。従来の診療項目ごとに計算する「出来高払い」方式とは異なり、入院患者の病名や症状をもとに手術などの診療行為の有無に応じて、厚生労働省が定めた診断群分類(約1,440分類)点数に基づいて、1日当たりの金額からなる包括評価部分(注射・投薬・処置・入院基本料 等)と出来高評価部分(手術・麻酔・心臓カテーテル/内視鏡検査・リハビリ 等)を組み合わせて医療費を計算する定額払いの会計方式です。

簡単に言うと、心筋梗塞という病名をつけたら、治療が長引いてもたくさん検査をしても、支払われる金額は一定ということです。ただし、カテーテル検査を2回するとこの部分は出来高払いですので、2回分の料金が発生しますが、入院日数が2回検査したために長引いても料金は同じです。このやり方をすると、無理矢理に収益を上げるためにゆっくりした過剰な治療はできません。もちろん過剰な治療をしてもかまわないのでしょうが、しても収益が上がらないので意味がありません。でも必ずしもそうとも言いきれません。え、どういうこと? 

次回に続きます。

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