北風ブログー761
2023/8/18更新
ビッグモーター(BIG MOTOR)ー3
ビッグモーター4
前回、「包括払いであれば、過剰な治療をしてもそれほど収益が上がらないので、医療機関は過剰な治療を通常はしない」とお伝えしましたが、かならずしもそうとも言いきれません。過剰な治療をしなくても医療機関が収益を上げることができるのです。
それは、医師が自分の裁量で、大した病気でもないのに大きな病気のように繕うことです。病名をつけるのは医師ですから。たとえば、「不安定狭心症」なのに「急性心筋梗塞」とする、「気分が少しふさぎ気味の程度」(神経症)なのに「うつ病」という病名をつけることは可能です。そうすると病名に従って入院の費用が保険から支払われますから、収益が上がります。「不安定狭心症」と「急性心筋梗塞」はかなりオーバーラップをしているので、本当は「不安定狭心症」なのに「急性心筋梗塞」と病名をつけてもだれも疑いませんし、カルテを調べられても言い逃れすることができます。でも医師本人はぎりぎりアウトだろうとわかってはいるのです。でも、より重症の病名をつけることにより大きく料金は変わります。今回のビッグモーターの事件は、車体に無理やり傷をつけて修理費を保険会社に払わせたわけですが、医師もそのつもりになれば、無理矢理少し重症な病名をつけて収益を上げることが可能です。さらに、ビッグモーターが故意に車に傷をつけたように、医師がきっちりした治療をしなければ、高血圧という病名から慢性心不全、急性心不全へと導くことすらできるのです。そうすれば収益があがります。
でも、医師はそのようなことはしません。医師は『ヒポクラテスの誓い』を守るからです。『ヒポクラテスの誓い』の中に「・・・・・養生治療を施すに当たっては、能力と判断の及ぶ限り患者の利益になることを考え、危害を加えたり不正を行う目的で治療したりはいたしません。また求められても、致死薬を与えることはせず、そういう助言も致しません。・・・・また、どの家にはいって行くにせよ、すべては患者の利益になることを考え、どんな意図的不正も害悪も加えません。・・・・・ 治療の時、または治療しないときも、人々の生活に関して見聞きすることで、およそ口外すべきでないものは、それを秘密事項と考え、口を閉ざすことに致します。 ・・・・・しかし誓いから道を踏み外し偽誓などをすることがあれば、逆の報いをうけますように。」という文言があるからです。
これに反することをすれば、医師法に違反となり処罰されますし、医師免許の停止、剥奪となります。実際、健康な女性に子宮筋腫という病名をつけて子宮摘出を行った医師や、狭心症がないので無理矢理カテーテル治療をした医師などいたのですが、傷害罪、賠償金+慰謝料に加えて医師免許停止となっています。医師から医師免許を取ってしまえば普通の人以下です。医者は、医療以外のことは何もできませんから。
詐欺はどの分野の仕事でもご法度ですし、それよりなにより良心に基づいて仕事をしなくてはいけません。