北風ブログー769
2023/10/13更新
病気―12
私、大阪大学医学部がまだ大阪市福島区にあった時に、堂島にあたりにあった富士電機・富士通の産業医をしていました。産業医として週一度半日だけ、アルバイトに行くのです。なぜ、アルバイトに行かないといけないか?
その時は私、大阪大学医学部第一内科所属の大学院生でした。大学院生は、医学部を卒業して医師になったあとのキャリアアップのために研究活動に入るための登竜門のようなものです。大学での研修を終了して、通常は外部の病院でさらに臨床研修を継続するのですが、私は研究をしてみようと思い循環器グループの大学院に入学しました。もちろん、大学院の入学試験がありますが、英語だけの試験ですのでそれほど苦痛ではありませんでした。27歳ぐらいでしたか、大学院生になったのは。もういい年です。
でも大学院生ですから、学生です、授業料を大学に払わなくてはいけません。国立大学ですから、年間授業料は微々たるものですが(確か、年間96,000円だったと思います)、ほかの仲間は給料をもらっているわけですから、上と下で大きなギャップが生じます。その大学院生の生活のために、医局はアルバイトを紹介してくれます。特に研究が主体の大学院生は、研究への時間を最大限にするため、大学から近いところをバイト先として紹介して、早く研究室に戻ってこさせていたのです。
その富士電機ビルは、大学から徒歩10分ぐらいのところにあり、14時50分に研究室を出て15時に富士電機について2時間産業医としての業務をして17時に終了、17時10分には研究室に戻ってまた、研究活動に入るわけです。北区はいつも終電でしたので、研究室を出るのは23時ぐらいですので、6時間近くそこからまた研究活動に入ります。
その富士電機の総務部長、私の座っている医務室に来られました。美人の看護師さんに呼ばれたとのことで、健康診断で血圧が高いと言われたそうで、循環器専門の私のところに来られたのでした。血圧を測りますと、確かに180/110mmHgで高血圧でした。セオリーどおり、「それでは戸田さん、これから1カ月間、食事療法と運動療法をしてください。食事療法は、塩分を減らくこと、野菜を十分にとること、野菜にはカリウムが多く含まれていて血圧を下げます、よく運動をしてください」とお伝えしました。1カ月後、戸田さんをお呼びすると「いま接客中なので、17時前に行っていいですか」とのこと。17時まえにあたふたと戸田さん来られて血圧をはかると190/110mmHgでした。「戸田さん、全然下がっていないですね。生活習慣変えていますか?」戸田さん曰く「頑張ります、でも、最近忙しくて忙しくて、生活習慣どころではないのですよ(笑)」とのことです。
この戸田さん、よくあるパターンの高血圧でそれほど大きな問題ではないのですが、この戸田さんが私の臨床経験に大きなインパクトをもたらすことになります。